北海道骨粗鬆症研究会 理事長 高畑 雅彦
北海道骨粗鬆症研究会は、地方の研究会ではありますが、医師、薬剤師、理学療法士、看護師などの医療者に加えて、研究者、企業関係者など多くの職種の方が集まり、知識の共有や治療法、予防策の向上、開発を目指す稀にみる学際的な組織です。平成1年に発足してから30年以上の長い間、たゆまず活発な研究、啓発活動を行って参りました。
当研究会の使命は、骨粗鬆症という人口の超高齢化が進む我が国においてきわめて重要な健康課題に対する取り組みを通じて、地域社会の健康と福祉を支えることです。骨粗鬆症を基盤とした脆弱性骨折は、生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、寿命を縮めることも明らかになっています。また、骨折による要介護、要介助者の増加は、人的あるいは経済的な負担を若い世代に背負わせる一因になっています。私たちは、骨粗鬆症の予防、早期発見、適切な治療法の普及を通して脆弱性骨折発生数を減らし、健康寿命を延伸することを目標に活動しています。
さて、本研究会では、上記使命を達成するために以下の三つの行動指針に従って活動してまいります。
1)道内で活動する医療者や研究者の情報交換、研究成果を活発に議論する場を提供すること
2)骨粗鬆症に関する最新の医療情報を道内の医療従事者に提供すること
3)骨粗鬆症に関する正しい情報を道民の方々に提供し健康で自立した生活を支援すること
過去20年で骨粗鬆症の診断、治療は飛躍的に向上してきました。理論的には、適切に診断、治療すれば多くの脆弱性骨折を予防できるはずですが、未だ本邦では脆弱性骨折発生数増加の傾向がとまっていません。原因のひとつは骨粗鬆症患者の多くが治療をうけていないことにあると考えられています。そのため、市民への啓発活動とともに多くの医療者、とくにプライマリケアに関わる方たちに骨粗鬆症について知っていただくことが必要です。
また薬物療法や運動療法については、効果的に行う方法がある反面、注意しなければならない点があることも確かです。わたくしたちは骨粗鬆症の専門家として治療に関する経験を共有するとともに、最新の知見や情報を正しく解釈し、発信してまいります。
本研究会へのご理解とご支援をお願いいたします。
北海道骨粗鬆症研究会は、北海道大学整形外科の金田清志名誉教授が中心となり、松野誠夫北海道大学名誉教授、石井清一札幌医科大学名誉教授、竹光義治旭川医科大学名誉教授、増田武志我汝会えにわ病院理事長、北海道大学婦人科の藤本征一郎名誉教授、北海道大学解剖学の阿部和厚北大名誉教授、北海道大学歯学部生化学の久保木芳徳北大名誉教授が役員となり、平成1年に発足いたしました。平成1年3月10日に第1回研究会を札幌パークホテルで開催し、それ以来毎年一回の学術集会を開催しております。
平成17年からは、整形外科の伊東学北大特任教授、高田潤一北郷整形副院長、旭川医療センター内科の平野史倫主任医長、北大婦人科の小林範子助教が研究会運営の中核を担い、道内で活発に活動している整形外科、内科、婦人科、小児科、衛生学の医師たちが新役員に加わり、骨粗鬆症治療に関する最新の情報交換を行う学術研究会として道内最大規模の骨粗鬆症研究会に発展しております。
平成21年からは網塚憲生北大歯学部口腔健康科学教授や骨代謝研究を専門にする道内基礎研究者も加わり、骨代謝やバイオメカニクス、生体材料など基礎研究の発表も増え、益々活気ある組織として運営体制が強化されてまいりました。
平成24年には、5名の理事と20名程度の評議員から構成する新しい運営組織が編成され、学術団体としての基盤が整います。
令和5年には理事会が新体制となりました。高畑雅彦北大整形外科・准教授、長谷川智香北大歯学研究院硬組織発生生物学教室・准教授、射場浩介札医大運動器抗加齢医学講座・特任教授、加藤育民旭川医大産婦人科・教授、木村―須田廣美公立千歳科学技術大学応用化学生物学科・教授、高橋裕樹札医大免疫・リウマチ内科学・教授、永井聡NTT東札幌病院糖尿病内分泌内科・部長が研究会の中心を担い、最新の臨床・基礎研究の発表や共同研究を推進させ、骨粗鬆症や骨代謝に関する学問を牽引する学際的組織としてさらなる発展を目指しています。
(文責:理事長 高畑雅彦)